活動報告
2023.08.07

「海の日」トークイベントを開催しました

2023年7月17日、「海の日」の祝日、3連休の最終日で賑わう大浜海浜公園海洋展示館でトークイベントを開催しました。

【ゲストスピーカー】
清野聡子(九州大学院工学研究室環境社会部門生態工学研究室 准教授)
ミロコマチコ(画家/絵本作家)
碇山勇生(一般社団法人NEDI代表理事/パタゴニア・サーフィンアンバサダー)


冒頭、ゲストスピーカーの清野先生に“身近な海で今起きていることは地球全体につながっている。”というテーマでスピーチをしていただきました。

清野先生は、九州大学で海岸環境保全・再生、住民参加型の自然環境管理を専門に、特に砂浜と干潟を対象に地域の住民参加型の意思決定の研究と実践に取り組みながら、「九州大学うみつなぎ」の総括プロデューサーとして海洋教育プログラム作りをされています。

清野先生がスライドに映し出した1枚の写真、一見すると綺麗な海ですが、実際は海藻が枯れて岩肌が露出した海の写真、清野先生のお話は、海の環境は地球全体を見るようにして考える必要があるということでした。そして、清野先生が語るのは、その地方特有の自然状況に敏感であることの大切さ、伝統的な知識や経験の大切さでした。

「地球全体を見るようになって全体の関係がわかるようになってきた。海の温度がすごく上がると水蒸気が上がって雲ができやすくなる。インド洋の水温が温かくなって、東南アジアを渡ってそれが発達した雲となってやってくる。太平洋の高気圧と低気圧の力関係。そういった全体の影響で、日本でも豪雨になってしまう。地球規模で考えることが必要な時代になっている。」

「島に住む人のすごいところは天気に敏感なこと、移り変わりやすい天気を良く知っている。島であることによる特有の自然環境、島に住んでいると自然の変化に敏感になる。ローカルな気象にはまだまだ科学も追いついていない。そこに住んでいる人が、雲を見たり、風を感じたり、そういう経験値がまだまだ重要になる。」

「伝統的な生活道具や経験値もとても大切。例えば、植物の葉を編んで作った編み笠、これは、蒸し暑い環境でも風を通す機能的な材質、使い古して捨てるときにも自然に還る。こういった先人の知恵はこれからもとても大切。」

清野先生のお話は、世界の海がつながっていることが漂着ゴミの問題や生態系にも影響を与えているという問題、だからこそ、自分たちの住んでいる場所の海を汚してしまうと、それがどんな影響を他に与えるのか、海の循環を理解して、地元に住んでいる一人一人が感性と経験を大切にして生活することが大切だということでした。

「近年の30年間くらいの間に、漂着ゴミも変化している。発泡スチロール、ペットボトルなどが流れ着くのが当たり前になってきている。さらに、漂流物とともに流れてくる生物の増大、それにより、別の国で発生したものが別の国に運ばれていくことで、海の生態系も変わってしまっている。」

「日本からアラスカ、カリフォルニア、ハワイへ。さらに回って東北から沖縄へ戻ってくる。そういう漂流物の流れも分かってきている。」

清野先生の“身近な海で今起きていることは地球全体につながっている。”というお話を聴いて、ミロコマチコさん、そしてNEDIから碇山勇生も交えてトークセッションをさせていただきました。

ミロコマチコさんは、大阪府出身、2019年に大阪から奄美大島に移住して生活して絵を描いています。

ミロコマチコさんから

「(清野先生のお話を聴いて)感覚でそうじゃないかなと思っていたことが、そうなんだということを実感できた。目の前でしていることが循環して自分の生活に返ってくる。小さなことでこれくらいのことでは大したことじゃないんじゃないかなと思うことも続けていければちょっとずつ変わっていけるのかなと思った。」

碇山勇生から

「僕は、サーフィンをしているので、島の天気の変化をすごく身近に感じる。奄美にいると天気の変化も感じやすい。赤尾木で生まれ育ち、海の近い環境が小さい時から当たり前だった。サーフィンのおかげで海外のいろいろな海を見て、奄美に帰って来て、地元の海がすごい魅力があって、世界でも奄美にしかない貴重なものなんだということを知った。年を重ねて、サーフィンの経験を重ねて、それがもっとわかってくる。それを子どもたちに繋ぎたいと思っています。」

パタゴニアから発売されたミロコマチコデザインのTシャツ「ナナイロ・オーシャンレスポンシビリティー」について、ミロコマチコさんから解説もしていただきました。

「大阪から奄美に移住して赤尾木湾の目の前に住んでいるので、そこに関係することを描きたかった。奄美では、秋になるとシイラが入ってくる。そういう光景が、来年も再来年も何十年後も続いたらいいなという想いで、それでシイラを描いた。シイラは、外海から回流してくる魚で、海のつながりでもある。」「『赤尾木湾は昔もっともっと珊瑚が綺麗で、七色に光っていてね』というお話を島のおばあから聞いてメッセージに込めている。」「この絵いいかなというところからでも関心を持ってもらえたらと思っている。」

ということでした。

ミロコマチコさんの絵本、「みえないりゅう」で登場する“小さな海”も赤尾木湾をモチーフにしています。「みえないりゅう」が“小さな海”から外洋に出て、それからまた戻ってくるお話。ミロコマチコさんからは、絵本「みえないりゅう」に登場するそれぞれの場面についてもお話をしていただきました。

今回、1年に1回の「海の日」に、多くの方々にお越しいただいて、海の目の前の会場で、奄美の海つながりについてお話をするトークイベントを開催することができました。海はつながっていて、目の前の海で起きていることが循環して遠くの海にも影響する、そしてまた目の前の海に戻ってくる、それを忘れずに、身近にできることを大切にしていきたいと私たちも改めて考える機会になりました。

来年の「海の日」にも、またNEDIで私たちの身近な海とそのつながりについて考える機会を作りたいと考えています。

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